Posted by なぎさ - 2009.05.20,Wed
「な、何の話を…」
「君は何も知らない。何も覚えていない。だから余計に気に食わない。僕のことなど覚えていないだろう?」
笑みが消え、刺すような視線で見られて思わず恐縮してしまう。知らない。彼など、知らない。それに、知りたくないと頭のどこかで自分が叫ぶ。
どうしてまったく自分と全く同じ容姿をしている?
どうして綱吉が彼の腕に抱かれている?
「むかつくんですよねぇ…綱吉が君のことを気にする度に…」
腕に抱いた綱吉の頬に軽く口づけを落とすと、骸は静かに綱吉を地面に横たえた。苦しそうに喘ぐ綱吉は、地面に降ろされると同時に身体を丸める。小さく震える彼の身体は、どう見ても正常ではない。
「君…、綱吉くんに何したんですか…?」
「おやおや。君は自分の心配をしたほうがいいんじゃないですか?」
ニヤリと口端をつり上げた漆黒のマントを羽織った骸は、ゆっくりと立ち尽くしている骸の方へと歩を進める。本当にすぐ目の前で止まった彼は、身長もまったく同じ、顔も、まったく同じ…双子かと錯覚するほど酷似している。ただ、ただ一つ違うのは、目の前の彼の右目だけが血のように紅いということ。それと服装以外は何もかもが一緒のように思えた。
「ここ、綱吉にやられたんですか?」
「…っ!」
首筋をつうと撫でられて、ゾクリと背中に悪寒が走る。そこは、ちょうど綱吉に付けられた二つの赤い点がある場所。
「やっぱりむかつきますね。死んでください」
その顔からすとんと表情が抜け落ちる。深紅と群青がスッと細められる。自分に向けられる、殺気。
…本気だ。
逃げなければ死ぬと悟ったが、身体は金縛りに遭ったかのようにピクリとも動かなかった。そう、一番始めに綱吉に襲われた時と同じ…
しかしその時とは恐怖の格が違いすぎる。
…死ぬ。
長く鋭利な爪が首元へと伸びる。グッと力を込められた瞬間、死んだと、思った…
「駄目…っ!」
「…っ!?」
しかし実際には短くて浅い赤い線が引かれただけ。首に走ったピリッとした痛みは、目の前の急激な展開のせいでほとんど現実味を帯びて感じられなかった。
目前に飛び込んできた、ハニーブラウン。
彼、綱吉は、肩で息をしながらもしっかりと骸の手を振り払い、対峙する二人の間に割り込んでいた。
「骸は…殺させない…!」
「君は何も知らない。何も覚えていない。だから余計に気に食わない。僕のことなど覚えていないだろう?」
笑みが消え、刺すような視線で見られて思わず恐縮してしまう。知らない。彼など、知らない。それに、知りたくないと頭のどこかで自分が叫ぶ。
どうしてまったく自分と全く同じ容姿をしている?
どうして綱吉が彼の腕に抱かれている?
「むかつくんですよねぇ…綱吉が君のことを気にする度に…」
腕に抱いた綱吉の頬に軽く口づけを落とすと、骸は静かに綱吉を地面に横たえた。苦しそうに喘ぐ綱吉は、地面に降ろされると同時に身体を丸める。小さく震える彼の身体は、どう見ても正常ではない。
「君…、綱吉くんに何したんですか…?」
「おやおや。君は自分の心配をしたほうがいいんじゃないですか?」
ニヤリと口端をつり上げた漆黒のマントを羽織った骸は、ゆっくりと立ち尽くしている骸の方へと歩を進める。本当にすぐ目の前で止まった彼は、身長もまったく同じ、顔も、まったく同じ…双子かと錯覚するほど酷似している。ただ、ただ一つ違うのは、目の前の彼の右目だけが血のように紅いということ。それと服装以外は何もかもが一緒のように思えた。
「ここ、綱吉にやられたんですか?」
「…っ!」
首筋をつうと撫でられて、ゾクリと背中に悪寒が走る。そこは、ちょうど綱吉に付けられた二つの赤い点がある場所。
「やっぱりむかつきますね。死んでください」
その顔からすとんと表情が抜け落ちる。深紅と群青がスッと細められる。自分に向けられる、殺気。
…本気だ。
逃げなければ死ぬと悟ったが、身体は金縛りに遭ったかのようにピクリとも動かなかった。そう、一番始めに綱吉に襲われた時と同じ…
しかしその時とは恐怖の格が違いすぎる。
…死ぬ。
長く鋭利な爪が首元へと伸びる。グッと力を込められた瞬間、死んだと、思った…
「駄目…っ!」
「…っ!?」
しかし実際には短くて浅い赤い線が引かれただけ。首に走ったピリッとした痛みは、目の前の急激な展開のせいでほとんど現実味を帯びて感じられなかった。
目前に飛び込んできた、ハニーブラウン。
彼、綱吉は、肩で息をしながらもしっかりと骸の手を振り払い、対峙する二人の間に割り込んでいた。
「骸は…殺させない…!」
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Posted by なぎさ - 2009.05.19,Tue
「…で?今日は何でまた?」
自室に戻るなり着替えの服を抱えてすぐさま綱吉の部屋に駆け込んできたツナに、綱吉は半ば呆れた視線をやる。
「これからある法学の勉強やりたくない。あと綱吉はこれから雲雀さんと実技の授業。うん、一石二鳥」
「…や、それ俺が一石二鳥じゃないだろう。むしろ、二石零鳥みたいな」
「お願い綱吉変わってぇー!!」
ひしと抱きつかれて頼まれれば、断ることなど出来ない。
そう、王子と姫としての立場を変われと言っているのだ。
双子であるならではの、裏技。今まで何回もやっているが、ほとんどばれたためしはない。…一部を除いて。
しぶしぶ了承した後、で、いったい何でだと再び問えば、ツナは綱吉に抱きついたまま顔をあげた。その表情は…いつものぽやんとしたツナではない。
「やられたからやりかえす」
「は…?」
「雲雀さんの顔に一発叩き込んでやんないと気がおさまらない」
何か物騒なことを言っている、この子は。
綱吉の背にツゥと何か冷たいものが伝う。
どうやら先ほどの椅子の件を言っているらしい。確かにあのときは綱吉が助けなかったらツナは少々怪我をしていたかもしれないが…
「…雲雀相手に大丈夫なのか?」
「さぁ…?でも、やられっぱなしは性に合わないし」
ツナの顔に傷でもついたら大変だと心配する綱吉をよそに、ツナはニヤリと笑みを浮かべる。
「そんじゃ、急いで綱吉っ!また骸でも来たら大変」
引っ付いていた綱吉から離れ、すぐさまその場で服を脱いで着替えを始めたツナに綱吉が苦笑いを浮かべる。
「…で?俺は何を着れば?」
綱吉の部屋のクローゼットから手頃な服を引っ張り出したツナがこちらに向かってニコリと笑みを投げかけてくる。
「そこにあるオレが持ってきたヤツ!」
「…これ、ね……」
床に放置してある服を持ち上げてみれば、ツナが普段着ているものよりも明らかにフリルの多いドレス…
綱吉が一瞬固まったのを知ってか知らずか、ツナは綱吉と同じように髪を後ろで一束ねにしながら綱吉のほうへ寄ってくる。
「それさ、絶対綱吉に似合うと思うんだっ。あ、髪結うから早く着ちゃって!」
さすがにツナに脱がされるのもアレなので、服に手をかけようとするツナを制して慌てて自分でドレスに着替える。似合うも何も、同じような顔なのだからその言い方はおかしくないかと思うがツナのほうをちらりと見ても自分の発言に何の疑問も持っていない様子。綱吉は諦めて、とりあえず後ろで一つに束ねてあった髪をほどいた。
「じゃ、いつも通りで…!お昼になったら戻ろっ」
器用に綱吉の髪を編み込みながらツナが言う。昼までこのままかと内心ため息をつきつつ、へますんなよ、と小さく呟けば、ツナは、当然!と言って再びニヤリと笑った。
「はぁ…」
重い服に少々げんなりしながら法学の先生の部屋へと向かう。あまりしゃべるとボロが出るので、必要最低限以外は口を開かない。それが暗黙の了解。
綱吉は長い廊下をのろのろと歩きながら再度ため息をついた。
ツナが変わってくれと言った雲雀との授業。はっきり言って…綱吉はその授業で無傷で済んだ試しがない。綱吉との二人がかりでの戦闘なら話は別だが…
…なんだか物凄く心配になってきた…
悶々と考えながら歩いていたせいだろうか。後ろにそっと近づく気配にも全く気づかなかった。
「ツナくーんっ」
「っ!?」
いきなり後ろから抱きしめられて、綱吉は驚いて首だけをまわして後ろを振り返った。声も出せないほどの驚きようで口をパクパクさせるだけの綱吉を見て、おや、と首を傾げたのは…
「おや、綱吉くんのほうでしたか」
骸だった。
自室に戻るなり着替えの服を抱えてすぐさま綱吉の部屋に駆け込んできたツナに、綱吉は半ば呆れた視線をやる。
「これからある法学の勉強やりたくない。あと綱吉はこれから雲雀さんと実技の授業。うん、一石二鳥」
「…や、それ俺が一石二鳥じゃないだろう。むしろ、二石零鳥みたいな」
「お願い綱吉変わってぇー!!」
ひしと抱きつかれて頼まれれば、断ることなど出来ない。
そう、王子と姫としての立場を変われと言っているのだ。
双子であるならではの、裏技。今まで何回もやっているが、ほとんどばれたためしはない。…一部を除いて。
しぶしぶ了承した後、で、いったい何でだと再び問えば、ツナは綱吉に抱きついたまま顔をあげた。その表情は…いつものぽやんとしたツナではない。
「やられたからやりかえす」
「は…?」
「雲雀さんの顔に一発叩き込んでやんないと気がおさまらない」
何か物騒なことを言っている、この子は。
綱吉の背にツゥと何か冷たいものが伝う。
どうやら先ほどの椅子の件を言っているらしい。確かにあのときは綱吉が助けなかったらツナは少々怪我をしていたかもしれないが…
「…雲雀相手に大丈夫なのか?」
「さぁ…?でも、やられっぱなしは性に合わないし」
ツナの顔に傷でもついたら大変だと心配する綱吉をよそに、ツナはニヤリと笑みを浮かべる。
「そんじゃ、急いで綱吉っ!また骸でも来たら大変」
引っ付いていた綱吉から離れ、すぐさまその場で服を脱いで着替えを始めたツナに綱吉が苦笑いを浮かべる。
「…で?俺は何を着れば?」
綱吉の部屋のクローゼットから手頃な服を引っ張り出したツナがこちらに向かってニコリと笑みを投げかけてくる。
「そこにあるオレが持ってきたヤツ!」
「…これ、ね……」
床に放置してある服を持ち上げてみれば、ツナが普段着ているものよりも明らかにフリルの多いドレス…
綱吉が一瞬固まったのを知ってか知らずか、ツナは綱吉と同じように髪を後ろで一束ねにしながら綱吉のほうへ寄ってくる。
「それさ、絶対綱吉に似合うと思うんだっ。あ、髪結うから早く着ちゃって!」
さすがにツナに脱がされるのもアレなので、服に手をかけようとするツナを制して慌てて自分でドレスに着替える。似合うも何も、同じような顔なのだからその言い方はおかしくないかと思うがツナのほうをちらりと見ても自分の発言に何の疑問も持っていない様子。綱吉は諦めて、とりあえず後ろで一つに束ねてあった髪をほどいた。
「じゃ、いつも通りで…!お昼になったら戻ろっ」
器用に綱吉の髪を編み込みながらツナが言う。昼までこのままかと内心ため息をつきつつ、へますんなよ、と小さく呟けば、ツナは、当然!と言って再びニヤリと笑った。
「はぁ…」
重い服に少々げんなりしながら法学の先生の部屋へと向かう。あまりしゃべるとボロが出るので、必要最低限以外は口を開かない。それが暗黙の了解。
綱吉は長い廊下をのろのろと歩きながら再度ため息をついた。
ツナが変わってくれと言った雲雀との授業。はっきり言って…綱吉はその授業で無傷で済んだ試しがない。綱吉との二人がかりでの戦闘なら話は別だが…
…なんだか物凄く心配になってきた…
悶々と考えながら歩いていたせいだろうか。後ろにそっと近づく気配にも全く気づかなかった。
「ツナくーんっ」
「っ!?」
いきなり後ろから抱きしめられて、綱吉は驚いて首だけをまわして後ろを振り返った。声も出せないほどの驚きようで口をパクパクさせるだけの綱吉を見て、おや、と首を傾げたのは…
「おや、綱吉くんのほうでしたか」
骸だった。
Posted by なぎさ - 2009.05.18,Mon
よしよしと頭を撫でてやると、綱吉は小さく身じろぎしたが血を飲むのは止めない。よっぽど足りなかったのだろう。
しばらくすると綱吉の血を飲み下すペースが落ちてくる。これもいつも通り。ついには首から口が離れて、綱吉は骸の胸にぽすんと納まった。少し荒い呼吸音がすぐ下から聞こえる。
「おやおや、もう寝ちゃいましたか。つまらないですね…」
小刻みに震える綱吉の身体には異変が起き始めていた。男に…、戻る。
「ずっと、女でいればいいのに…」
そうすれば、二人の永遠を刻めるのに…
やはり生前に男であった綱吉を女として甦らせることは出来なかった。実際に今女だったのだから出来なかったと言えば嘘になるが、女になる度に死にそうになっていては意味がない。
「綱吉くん、屋上にいるって言ってましたよね…」
骸は屋上への階段を登りながらぽそりと独りごちた。授業も終わり帰ろうと思ったのだが、綱吉を置いて帰るわけにはいかない。
〝彼は…ヴァンパイア…〝
そう、本人も言っていた。その自称ヴァンパイアが何故自分のところに来たのだろうか。あの様子からするに、自分を食いつぶしに来たわけではないようだが…
不明なことが多すぎる。頭がパニックを起こしそうだ。
本日何回目かのため息をつくと、骸は屋上のドアに手を掛けた。
出会ってはいけない二人が 出会う
「え…」
「おやおや…」
骸は屋上に足を踏み入れた途端、顔を強張らせた。心臓が早鐘を打つ。冷や汗がドッと吹き出し、背中に冷たい汗が伝う。
少し先にいるのは、どこからどう見ても自分。
そして、その腕の中でぐったりとしているのは、綱吉。
「だ、誰ですか…君…」
震える声で問えば、その自分そっくりの人物は、綱吉を抱き寄せたままニヤリと底冷えのする笑みを浮かべて立ち上がった。漆黒のマントを翻して自分のほうを見たのは…やはり、自分。ただ、自分にはあんな笑みは作れない気がする。
「わざわざそちらから来てくれるなんてね。行く手間が省けました。殺されに来てくれたんですか?」
「殺さっ…?」
何か危ないものを感じて、骸は半歩後ろに下がった。底知れぬ恐怖が全身を支配する。見つめ合っているだけで魂さえも奪われてしまうのではないかと錯覚させるほどの何か、恐ろしいもの…
「綱吉は言いましたけどね。君は、僕だと。ですが…二人もいらないと思うんですよね」
しばらくすると綱吉の血を飲み下すペースが落ちてくる。これもいつも通り。ついには首から口が離れて、綱吉は骸の胸にぽすんと納まった。少し荒い呼吸音がすぐ下から聞こえる。
「おやおや、もう寝ちゃいましたか。つまらないですね…」
小刻みに震える綱吉の身体には異変が起き始めていた。男に…、戻る。
「ずっと、女でいればいいのに…」
そうすれば、二人の永遠を刻めるのに…
やはり生前に男であった綱吉を女として甦らせることは出来なかった。実際に今女だったのだから出来なかったと言えば嘘になるが、女になる度に死にそうになっていては意味がない。
「綱吉くん、屋上にいるって言ってましたよね…」
骸は屋上への階段を登りながらぽそりと独りごちた。授業も終わり帰ろうと思ったのだが、綱吉を置いて帰るわけにはいかない。
〝彼は…ヴァンパイア…〝
そう、本人も言っていた。その自称ヴァンパイアが何故自分のところに来たのだろうか。あの様子からするに、自分を食いつぶしに来たわけではないようだが…
不明なことが多すぎる。頭がパニックを起こしそうだ。
本日何回目かのため息をつくと、骸は屋上のドアに手を掛けた。
出会ってはいけない二人が 出会う
「え…」
「おやおや…」
骸は屋上に足を踏み入れた途端、顔を強張らせた。心臓が早鐘を打つ。冷や汗がドッと吹き出し、背中に冷たい汗が伝う。
少し先にいるのは、どこからどう見ても自分。
そして、その腕の中でぐったりとしているのは、綱吉。
「だ、誰ですか…君…」
震える声で問えば、その自分そっくりの人物は、綱吉を抱き寄せたままニヤリと底冷えのする笑みを浮かべて立ち上がった。漆黒のマントを翻して自分のほうを見たのは…やはり、自分。ただ、自分にはあんな笑みは作れない気がする。
「わざわざそちらから来てくれるなんてね。行く手間が省けました。殺されに来てくれたんですか?」
「殺さっ…?」
何か危ないものを感じて、骸は半歩後ろに下がった。底知れぬ恐怖が全身を支配する。見つめ合っているだけで魂さえも奪われてしまうのではないかと錯覚させるほどの何か、恐ろしいもの…
「綱吉は言いましたけどね。君は、僕だと。ですが…二人もいらないと思うんですよね」
Posted by なぎさ - 2009.05.15,Fri
「恋人っ?恋人だって綱吉!!」
「はいそこ喜ばない!!責めてるってこと分かってますか!?」
顔を輝かせたツナに骸がすぐさまストップをかける。
分かってない…全然分かっていない…
骸が再び頭をかかえるのにも、相変わらずツナは気づかない。綱吉のほうは少し哀れみのこもった目で骸を見ていたが…
そんな三人だけのやりとりが続けられていたが、不意に部屋のドアが何の前触れもなしに開けられた。
「何朝から騒いでるの?」
部屋に入ってくるなり不機嫌そうに顔をしかめたのは、骸と同じ守護者の一人、雲雀恭弥。ノックくらいしろと視線だけで訴える骸には気づかないふりをして、雲雀はまっすぐにツナが座る椅子へと歩み寄った。
スプーンを口に含んだまま、ツナがきょとんと雲雀を見上げる。
と、次の瞬間、
「ひゃぁああっ!!」
ツナの悲鳴と共に、ツナが今の今まで座っていた椅子にトンファーが振り下ろされていた。ドガッという嫌な音と共に椅子が本来の原型など見る影もなく崩れ落ちる。
間一髪でツナを椅子から引きはがした綱吉がキッと無言で雲雀を睨んだ。
「あのねぇで僕が起こしに行ったのにいないとか、どういうことかな?」
「ごごごごごごめんなさい雲雀さん!!」
半泣きのツナが口にささったままであったスプーンをやっとこさ引き抜いて謝るが、そんな謝罪一言で機嫌が直る雲雀ではない。
「今晩たっぷりお仕置きしてあげるよ」
本気の目にツナがひぃっと小さく悲鳴をこぼす…が、その目は前に出てきた骸によってツナの視界から消えた。
「残念。ツナくんは今夜は僕と一緒に過ごすって先約があるんですよ」
「してないけど!?」
青くなったツナが綱吉の腕の中から叫ぶが、火花を散らした二人にはその必死の叫びも全く耳に入っていない。
あわあわしているツナと、冷静に二人を見る綱吉。
「…よし、行くぞツナ」
「ふぇ?」
間抜けな声を出したツナの手を引いて、できるだけ二人の視界に入らないように多少の注意を払いながら開いたままのドアから外に出る。案の定、双子が脱走したことに二人は気づいていない。綱吉は小さくため息をつくと、絨毯の敷き詰められた長い廊下を自室に向かって歩き出した。
「食事途中だったのに…」
名残惜しそうに今し方出てきたドアを振り返るツナに、綱吉は黄色い物体を差し出す。
「バナナ1本だけならカゴから盗んできたけど」
「つなよしぃ~~!!////」
瞬時に顔を輝かせたツナが綱吉に飛びつく。ツナはバナナを受け取るとその場で皮を剥いてかぶりつく。行儀悪いぞ、とたしなめれば、ツナはニコリと笑って綱吉にも食べかけのそれを差し出した。
「はい、綱吉もあーんっ」
「・・・・・」
…聞いちゃいない。
綱吉は苦笑すると差し出されたそれを一口だけもらう。
こんなんだからきっと骸にも叱られるんだろう。
程良く甘いそれを咀嚼しながら、綱吉は自室へ歩を進めるのを再開したのだった。
「はいそこ喜ばない!!責めてるってこと分かってますか!?」
顔を輝かせたツナに骸がすぐさまストップをかける。
分かってない…全然分かっていない…
骸が再び頭をかかえるのにも、相変わらずツナは気づかない。綱吉のほうは少し哀れみのこもった目で骸を見ていたが…
そんな三人だけのやりとりが続けられていたが、不意に部屋のドアが何の前触れもなしに開けられた。
「何朝から騒いでるの?」
部屋に入ってくるなり不機嫌そうに顔をしかめたのは、骸と同じ守護者の一人、雲雀恭弥。ノックくらいしろと視線だけで訴える骸には気づかないふりをして、雲雀はまっすぐにツナが座る椅子へと歩み寄った。
スプーンを口に含んだまま、ツナがきょとんと雲雀を見上げる。
と、次の瞬間、
「ひゃぁああっ!!」
ツナの悲鳴と共に、ツナが今の今まで座っていた椅子にトンファーが振り下ろされていた。ドガッという嫌な音と共に椅子が本来の原型など見る影もなく崩れ落ちる。
間一髪でツナを椅子から引きはがした綱吉がキッと無言で雲雀を睨んだ。
「あのねぇで僕が起こしに行ったのにいないとか、どういうことかな?」
「ごごごごごごめんなさい雲雀さん!!」
半泣きのツナが口にささったままであったスプーンをやっとこさ引き抜いて謝るが、そんな謝罪一言で機嫌が直る雲雀ではない。
「今晩たっぷりお仕置きしてあげるよ」
本気の目にツナがひぃっと小さく悲鳴をこぼす…が、その目は前に出てきた骸によってツナの視界から消えた。
「残念。ツナくんは今夜は僕と一緒に過ごすって先約があるんですよ」
「してないけど!?」
青くなったツナが綱吉の腕の中から叫ぶが、火花を散らした二人にはその必死の叫びも全く耳に入っていない。
あわあわしているツナと、冷静に二人を見る綱吉。
「…よし、行くぞツナ」
「ふぇ?」
間抜けな声を出したツナの手を引いて、できるだけ二人の視界に入らないように多少の注意を払いながら開いたままのドアから外に出る。案の定、双子が脱走したことに二人は気づいていない。綱吉は小さくため息をつくと、絨毯の敷き詰められた長い廊下を自室に向かって歩き出した。
「食事途中だったのに…」
名残惜しそうに今し方出てきたドアを振り返るツナに、綱吉は黄色い物体を差し出す。
「バナナ1本だけならカゴから盗んできたけど」
「つなよしぃ~~!!////」
瞬時に顔を輝かせたツナが綱吉に飛びつく。ツナはバナナを受け取るとその場で皮を剥いてかぶりつく。行儀悪いぞ、とたしなめれば、ツナはニコリと笑って綱吉にも食べかけのそれを差し出した。
「はい、綱吉もあーんっ」
「・・・・・」
…聞いちゃいない。
綱吉は苦笑すると差し出されたそれを一口だけもらう。
こんなんだからきっと骸にも叱られるんだろう。
程良く甘いそれを咀嚼しながら、綱吉は自室へ歩を進めるのを再開したのだった。
Posted by なぎさ - 2009.05.13,Wed
小さくドアをノックする。返事はないことが分かっているので静かにドアノブを回して室内に足を踏み入れた。白を基調とした無駄に広い部屋を奥まで突っ切ると、そこには天蓋付きのベッドがある。
そこをのぞき込んで…
骸は絶句した。
真っ先に目につく散らばった亜麻色の髪。
…が、二セット。
真っ白なシーツの上には、同じ顔の少年、少女が寄り添うようにして眠っていた。
『フ タ ゴ コ ロ』
「ちょっと何してるんですか君たち!?」
ハッと我に返った骸は慌てて二人を引きはがしにかかる。条件反射的にかお互いにお互いの寝間着をがっちりと掴んだ二人はなかなか離れない。
骸の目尻がひくりとなる。
「起きなさい!朝です!ツナくん!綱吉くん!」
負けじと耳元で叫べば、さすがに二人が少し顔をしかめる。しかし、まだ起きない。いつものことだがなんて寝起きの悪さだ。
「ツナくん!起きなさい!君なんでここにいるんですか!?」
力ずくでツナを綱吉から引きはがした骸は、そのままツナを抱えた体勢でツナの頬を軽くぺちぺちとたたく。
と、思いがけない早さで下から繰り出された拳が骸の顎を捕らえた。見事なアッパーが骸にきまる。
「ぐはっ!」
「ん、んんぅ…」
やっとこさ目をうっすらと開けたツナが、後ろにひっくり返った骸をぼんやりと不思議そうに見る。
「………何やってるの骸…?」
「…ここは綱吉くんの部屋でしょう?何故君がここで寝ているんですか…?」
君が吹っ飛ばしたんでしょうというツッコミはとりあえず置いておいて、骸は顎を押さえつつ起きあがった。
そう、ここは綱吉の部屋。ツナの部屋は隣だ。
ツナはしばらくぼけーとしていたが、未だにすよすよと眠る綱吉を見て、あぁ、と頷いた。
「そうだ。オレ、寂しくなって綱吉に一緒に寝てって頼んだんだ…」
「なっ、寂しいなら僕に言ってくだされば添い寝してさしあげ」
「やだ…綱吉がいい…」
見事に斬り捨てられて衝撃を受ける骸には目もくれず、ツナは綱吉のほうへと四つん這いになって歩み寄る。
「綱吉~、つ~なよし~!骸が起こしに来たらしいよ~」
耳元で言いつつゆっさゆっさと綱吉を揺らせば、小さく身じろぎした綱吉がやっと薄目を開けた。
が、
「……もうちょっと…」
言うなり、すぐ近くにいたツナを自分の腕の中に引きずり込んで再び眠る体勢に入ろうとする。
「ひぁっ」
再びベッドに倒れ込んだツナが小さく悲鳴を上げるのを聞いた骸がこの状況を黙っているわけがなかった。
「ちょっと待ちなさいぃぃいぃぃいっっっ!!!」
絶叫した骸が今度は綱吉のほうを引きはがす。
「い、いい加減にしましょうね“王子様”…!!」
ツナよりも些か目つきの悪い綱吉が寝ぼけ眼のまま骸を睨む。
「ツナのせいであんまり寝れなかったんだよ…」
「は?どういう意味…」
「綱吉ずるーい!骸、オレのことも“お姫様”って呼んでぇ?」
こちらも未だに寝ぼけている。
”なんだこの双子は…”
骸が頭をかかえて盛大にため息をついたのにも、この二人はまったく気づかなかったようだ。
そんな王室での朝の出来事。
綱吉 男。
ツナ 女。
二人は双子。
この国の王子様とお姫様である。
「まったく、君たちを起こす僕の身にもなってください…」
朝食の席。
朝からげっそりしている彼は双子の護衛の一人、六道骸。
先ほど二人を起こすために体力を使い果たしたようで、伸ばした背筋にもいつもの凛とした真っ直ぐ感が見られない。
そんな骸を、パンを口に運びつつちらりと横目で見る綱吉。
「しょうがないだろ、ツナのおしゃべりに付き合ってたら夜中の3時越してたんだよ…」
「…ツナくん、君は夜は部屋から出るの禁止です…」
「えぇ…っ、なんで!?」
ツナのスプーンからすくったばかりのスープがボタボタと皿の中に戻る。
「なんでじゃありません!君たちはねぇ、仲が良すぎるんです!だいたいもう兄妹って感じじゃないでしょう!?はたから見たら恋人ですよ!!」
そこをのぞき込んで…
骸は絶句した。
真っ先に目につく散らばった亜麻色の髪。
…が、二セット。
真っ白なシーツの上には、同じ顔の少年、少女が寄り添うようにして眠っていた。
『フ タ ゴ コ ロ』
「ちょっと何してるんですか君たち!?」
ハッと我に返った骸は慌てて二人を引きはがしにかかる。条件反射的にかお互いにお互いの寝間着をがっちりと掴んだ二人はなかなか離れない。
骸の目尻がひくりとなる。
「起きなさい!朝です!ツナくん!綱吉くん!」
負けじと耳元で叫べば、さすがに二人が少し顔をしかめる。しかし、まだ起きない。いつものことだがなんて寝起きの悪さだ。
「ツナくん!起きなさい!君なんでここにいるんですか!?」
力ずくでツナを綱吉から引きはがした骸は、そのままツナを抱えた体勢でツナの頬を軽くぺちぺちとたたく。
と、思いがけない早さで下から繰り出された拳が骸の顎を捕らえた。見事なアッパーが骸にきまる。
「ぐはっ!」
「ん、んんぅ…」
やっとこさ目をうっすらと開けたツナが、後ろにひっくり返った骸をぼんやりと不思議そうに見る。
「………何やってるの骸…?」
「…ここは綱吉くんの部屋でしょう?何故君がここで寝ているんですか…?」
君が吹っ飛ばしたんでしょうというツッコミはとりあえず置いておいて、骸は顎を押さえつつ起きあがった。
そう、ここは綱吉の部屋。ツナの部屋は隣だ。
ツナはしばらくぼけーとしていたが、未だにすよすよと眠る綱吉を見て、あぁ、と頷いた。
「そうだ。オレ、寂しくなって綱吉に一緒に寝てって頼んだんだ…」
「なっ、寂しいなら僕に言ってくだされば添い寝してさしあげ」
「やだ…綱吉がいい…」
見事に斬り捨てられて衝撃を受ける骸には目もくれず、ツナは綱吉のほうへと四つん這いになって歩み寄る。
「綱吉~、つ~なよし~!骸が起こしに来たらしいよ~」
耳元で言いつつゆっさゆっさと綱吉を揺らせば、小さく身じろぎした綱吉がやっと薄目を開けた。
が、
「……もうちょっと…」
言うなり、すぐ近くにいたツナを自分の腕の中に引きずり込んで再び眠る体勢に入ろうとする。
「ひぁっ」
再びベッドに倒れ込んだツナが小さく悲鳴を上げるのを聞いた骸がこの状況を黙っているわけがなかった。
「ちょっと待ちなさいぃぃいぃぃいっっっ!!!」
絶叫した骸が今度は綱吉のほうを引きはがす。
「い、いい加減にしましょうね“王子様”…!!」
ツナよりも些か目つきの悪い綱吉が寝ぼけ眼のまま骸を睨む。
「ツナのせいであんまり寝れなかったんだよ…」
「は?どういう意味…」
「綱吉ずるーい!骸、オレのことも“お姫様”って呼んでぇ?」
こちらも未だに寝ぼけている。
”なんだこの双子は…”
骸が頭をかかえて盛大にため息をついたのにも、この二人はまったく気づかなかったようだ。
そんな王室での朝の出来事。
綱吉 男。
ツナ 女。
二人は双子。
この国の王子様とお姫様である。
「まったく、君たちを起こす僕の身にもなってください…」
朝食の席。
朝からげっそりしている彼は双子の護衛の一人、六道骸。
先ほど二人を起こすために体力を使い果たしたようで、伸ばした背筋にもいつもの凛とした真っ直ぐ感が見られない。
そんな骸を、パンを口に運びつつちらりと横目で見る綱吉。
「しょうがないだろ、ツナのおしゃべりに付き合ってたら夜中の3時越してたんだよ…」
「…ツナくん、君は夜は部屋から出るの禁止です…」
「えぇ…っ、なんで!?」
ツナのスプーンからすくったばかりのスープがボタボタと皿の中に戻る。
「なんでじゃありません!君たちはねぇ、仲が良すぎるんです!だいたいもう兄妹って感じじゃないでしょう!?はたから見たら恋人ですよ!!」
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