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Posted by - 2024.05.17,Fri
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Posted by なぎさ - 2010.08.04,Wed
 「ようこそデーチモ!」
 
どちらが上か下かも分からないただ白のみが敷き詰められた世界。
目の前で両手を広げて微笑む金髪碧眼の男。
そして、その男の前でパジャマのままぺたりと座り込んでその男をぽかんと見上げる少年。
 
「………プリーモ?」
 
夢の世界へようこそ!
 
そう言ってこちらに手を差し伸べた男の手を、簡単に握ってしまった。
握った瞬間が夢のハジマリ。
 
あなたと約束した、夢のハジマリ――――
 
 
 
 
   続・夢ヘノイザナイ
 
 
 
 
「久しぶりだな、デーチモ。会いたかったぞ」
 
無邪気に微笑む年齢不詳の彼、ジョット。
言葉どおりのその邪気の無い顔に知らずと見惚れていた少年、綱吉はハッとして握っていた手を放した。
いつの間にか周りは真っ白な世界から一転、緑の隙間から光が射し込む薄暗い森の中になっていた。
 
「えぇと…あれ…俺、布団に入って…それから…」
「それで終わりだ。言っただろう?“夢の世界”だと。やっと二人きりで遊べる機会が巡ってきたってことだ」
 
うんうんと嬉しそうに一人頷くジョットに、綱吉は首を傾げた。
前にジョットに会ってから数ヶ月は経っている。
ジョットもいろいろと忙しかったということだろうか。
 
「違う違う。お前の霧がいつも邪魔をするから呼び出せな…」
「え?」
「ん、んん。や、今のは気にしないでくれ」
 
ジョットは軽く咳払いをするとくるりと背を向けてひらひらと手を振った。
ちなみに、ジョットが喋った内容よりも自分の思考が読まれていたことの衝撃のほうが勝ったため、綱吉は内容に関しては深く追求することもなくジョットの横に並んだ。
 
「ど、どうして俺の考えてたことが分かったんですかっ?」
「可愛いおまえのことだ。考えてることなど目をつぶっていても分かる」
「…!?……プ、プリーモってたまにとんでもないことさらりと言いますよね」
 
赤くなって目をそらした綱吉を目の端に捉えて、ジョットの口端が僅かに上がる。
ジョットは綱吉の腕を掴むと、そのまま綱吉を木の幹に押し付けた。
綱吉を見れば、ジョットと木に挟まれて抱き込められた状態の綱吉は、先ほどよりも更に赤くなった顔を隠すように顔をそらしてしまう。
ジョットは小さくため息をつくと、意地悪い笑みを浮かべて綱吉の顎に手をかけた。
そのまま顔を自分のほうへと強制的に向かせる。
 
「こっちを見てくれないのか?綱吉…」
「へっ…つな…!?」
「デーチモプリーモとなんだか他人行儀じゃないか。俺のこともジョットを呼んでくれ」
「えっ、いや…えっと…」
「呼んでくれないのか?」
 
お互いの鼻先が触れるくらいに顔を近づけてそう問えば、今にも湯気が出てきそうなリンゴ状態の綱吉が涙目で自分を見てくる。
ここまでくるとどこまで赤くなるのか試してみたくなる。
…が、これ以上綱吉を困らせるのも可哀想かと思ったジョットは、パッと綱吉を拘束していた腕をほどく。
綱吉はぺたりと木の根元に座り込んでしまった。
そのまま顔を伏せてふるふる震えるのを見て慌てたのはジョットである。
 
「…すまない、別に意地悪したかったわけでは…」
 
が、しゃがみ込んだ瞬間にスーツの袖をくいと引かれて、ジョットは目を丸くする。
 
「ジョットの…馬鹿…」
「つ、なよし…」
 
ジョットはしばらくぽかんとしていたが、次の瞬間綱吉を思いきり抱きしめた。
 
「おまっ、可愛すぎるだろぉぉぉぉ!!!」

(続く)
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Posted by なぎさ - 2010.07.14,Wed
「あれはないよジョット…」

湯気の立つ湯飲みに口をつけながら泰夫がポソリとこぼした。
二人が座る席のテーブルには、先ほど運ばれてきたばかりの寿司が並んでいる。
ジョットは回転寿司の気満々だったのだが、泰夫が指定したのは見事に高級寿司屋だった。
しかも特上寿司を頼まれてジョットのテンションはダダ下がりである。
ちなみにジョットの前には並寿司…ではなく、サラダ巻きが鎮座している。

「じゃあどうすればよかったんだよ……あ、ちゃんと一人ひとりに言えばよかったのか」
「いや、それやったら勘違いする人が余計に多発するから」

イクラを口に運びながら泰夫が呆れたように呟く。
あの「惚れた」発言がされた直後の部屋の光景は忘れられるものではない。
真っ赤になっている者、逆に真っ青になっている者、目を見開く者…まぁ、それを観察していた泰夫は無表情だったのだが。
そして目の前でもくもくとサラダ巻きを食べている男は、今日の夕方5時に空港に集合をかけた。
もちろん任意での集合である。同意すれば日本を今日発つことになるのだ。

「みんな来てくれるかな…」

Posted by なぎさ - 2010.06.28,Mon
そして午前9時。
ジョットの部屋には見慣れた面々が揃っていた。

「よかったねジョット」
「あぁ、うん」

まさか全員時間通りに揃うとは思っておらず、ジョットは泰夫の言葉に半分呆けたまま頷いた。

「ちなみに信二と一樹はデートでもしてたのか?」
「してねーよ!」
「釣りだ釣り!!っていうかわざわざ中断してとんで帰ってきた俺たちに労いの言葉の一つもないのかよ!?」

悪意なく紡がれたジョットの言葉だったが、当の本人たちは怒りを露わにしてジョットの頭をひっぱたいた。
5分ほど前に、どうやら一緒に釣りをしていたらしい信二と一樹が帰ってきて、部屋には無事に全員が揃った。
そして今、時計の針は約束の9時を告げようとしている。

「で、話なんだけど…」

二人にひっぱたかれた頭をさすりながらジョットが口火を切る。

「みんな、イタリアに一緒に来てくれないか?」
「「「「「「・・・・・・・・?」」」」」」

いきなり発せられた“イタリア”というワードに全員がかたまった。

「ワ、ワンモアプリーズ…?」
「だから、俺と一緒にイタリアに来てほしい」

おそるおそる言った一樹にもジョットは真顔で即答する。
ついでに一樹の手を握って。

「何コレ。俺口説かれてんの?」
「ああ、口説いてる」
「ちょっ、肯定かよ!?」

赤くなったり青くなったり色々と忙しい一樹を横目で見ながら、今度は泰夫が口を開いた。

「ちゃんと詳しいこと言ってくれないと分からないんだけど。イタリア来いってことは、ジョットが前に言ってたマフィアになれってこと?」

相変わらずぼーっとした顔の泰夫だが、目だけは真剣である。
ジョットは放心状態の一樹の手を放すと、改めて皆をぐるりと見た。

「…そういうことになる…かな。昨日の晩に、イタリアに残してきた屋敷があるファミリーに占拠されたって連絡があって………一刻を争う事態なんだ。すぐにイタリアに帰らなきゃいけない」

ジョットはそこで少し視線を下に落とした。
いきなりこんな話をされても困るだけだということは重々承知している。
それでも、ほんの少しでも望みがあるのなら、それに縋りたかった。

「そう、俺は…俺のファミリーになってくれってお願いをしてる。いきなりすぎることは分かってる…でも…」

一樹、信二、泰夫、サンサニー、髀子、…そして隼。
6つの視線がジョットに注がれる。

「俺は…おまえたちに惚れたんだ!」

強さに、とか、人間性に、という言葉が抜けたのが問題だった。

Posted by なぎさ - 2010.06.07,Mon
何か言い残したことでもあるのだろうか。
先ほど隼が部屋から出て行って30分も経っていないのだからそれ
は考えにくいのだが…
そんなジョットの考えを知ってか知らずか、隼の視線はジョットを通り越して泰夫のほうへ注がれる。
あからさまに面白くなさそうな隼に負けじと泰夫もものすごく面白くなさそうな顔をしているのだが、あいにく隼のほうを見ているジョッ トからは泰夫は見えない。
ジョットは
「あんまり泰夫にガン飛ばすなよ」
と僅かに困ったような表情を浮かべるが、隼からすれば泰夫にガンを飛ばされているのだから少々理不尽な発言だとも言える。
隼は一瞬口を開きかけたが、その瞬間泰夫がいつもの表情に戻ったため唇を引き結んで泰夫を睨むにとどめた。

「隼はジョットの部屋で何してるの?」
「…家康くんと話をしたかったんです。二人で」

つい先ほどジョットが疑問に思ったことを泰夫がさらりと尋ねる。
『二人で』にやけに力が込められていたことから、やはり先ほどの話の続きがしたかったということだろうか。
そんなことをぼんやり考えていたジョットだが、不意に泰夫が「俺も、」と続けたため驚いて後ろを振り返った。

「ジョットと話がしたいんだけど。二人で」

隼のよりもさらに力を込められた『二人で』に、ジョットが些か目を丸くする。
なんだろう。
そのためにわざわざ早めに来たのだろうか。
なんだか険呑な空気が漂い始めたことにやっと気づいたジョットが慌てて二人を交互に見る。

「えぇと、二人ともお互いがいたら駄目な話なのか?」
「駄目」「駄目です」

同時にきっぱりと発せられた言葉がさらにジョットを追い詰める。

「えぇと、えぇと…ど、どうすれば…」
「…やっぱり俺はいいや」

しかし、その狼狽するジョットを見て哀れに思ったのか、もしくは別の意図があってか、泰夫がけろりと態度を改めた。
隼の訝しげな視線を真っ向から受け止めて、泰夫には珍しく、僅かに微笑んで…

「後でジョットと昼飯行く約束してるし。二人で。だからそのときでいい」
「!?」

衝撃を受けたような顔をしている隼を一瞥すると、泰夫はいつも皆で集まるときの定位置へと腰をおろす。

「家康くん聞いてませんよ!?」
「や、そりゃあ今さっき約束したばっかりだし。っていうかお前に報告する必要もないだろ」

二人で行く約束は別にしていなかった気もするが、昼御飯を奢る約束をしているのは確かである。
これ以上連れが増えて全員に奢る羽目になっても嫌なのでジョットはそういうことにしておこうと頷いた。
酷いです家康くんと泣き崩れる(ふりをする)隼。
それをめんどくさそうに見るジョット。
もはや我関せずとあらぬほうを見る泰夫。
そして大分収拾がつかなくなってきた部屋にさらに追い討ちをかけるように一人の影が飛び込んできた。

「家康ー!集合時間忘レッチャッタヨー!」
「サンサニー…」

筋トレが終わり、着替えも済ませたらしいサンサニーがドタドタと部屋に上げって来るのと同時に、今まで伏せっていた隼が顔を上げて叫 んだ。

「二人で話したいって言ってるでしょう!?出てってください!!
「帰るのめんどくさい」「帰るのメンドクサイヨー!」

二人ともこの部屋に約束の時間まで居座るつもりらしい。
数分後に、すでに寮への帰り道の途中で式神に会ったらしい髀子も部屋に顔をのぞかせその場に居座ったため、結局隼の願いが 叶うことはなかった。
Posted by なぎさ - 2010.06.05,Sat
「でさぁ、いないんだよ!髀子ちゃんと一樹と信二が!助けてくれ!」
「あー、うん…」

ある部屋の前。
ジョットはドアから部屋の中にまで身を乗り出して必死に懇願中だった。
サンサニーは部屋で筋トレをしていたが、他の人の部屋はもぬけの空だったのである。
早起きなのはいいことだが今回に限っては全然よろしくない。
とりあえず、会話の流れで分かるがここは泰夫の部屋である。
案の定寝ていた泰夫を叩き起こして今に至る訳だが、いきなり起こされた泰夫は相当機嫌がよろしくない。
顔は相変わらずぼけーっとしているが内心舌打ちしているのは間違いなかった。

「寿司…」
「え?」
「昼…寿司…」
「分かった!奢る!奢るから!!」
「……ん」

泰夫は無表情で頷くと、パジャマのポケットから式神の札を3枚取り出した。
軽く息を吹きかければ、それはたちまち命ある狼へと形を変え、そのまま開いたドアの隙間から外へと飛び出していった。
何度か見ているが、いったいどういう仕組みになっているのか全くもって分からない。
一瞬で曲がり角に吸い込まれていった式神たちを目で送ると、ジョットはありがとう、と泰夫に深々と頭を下げた。

「一応すぐに戻るようにってことだけ伝えるようにしたけど、それでよかったよね?…まぁ、あいつらがすぐに帰ろうとするかまでは俺には分からないから帰ってこなくても文句はなしで」
「ああ、十分だよ。ありがとう」

あとは集まってくれるのを待つしかない…
それじゃあ、と言って去ろうとしたジョットだが、泰夫は靴を履いて部屋から出てきた。

「…?どっか出かけるのか?」
「そのままジョットの部屋にいる」








「で、帰ったらおまえがいるわけだ」
「酷いです家康くん!泰夫を連れ込んで何しようってんですか!?
「ほぉ…ベッドでスタンバイしてるお前は何もするつもりがなかったと…?

出るときに鍵はかけた。そして今も確かに鍵をあけた。
しかしドアを開けた向こうにはベッドに寝そべる隼の姿があった。
もう驚かない。…と思っていたがやはり心臓にきた。心臓に悪い。
軽く隼を睨んで部屋に入れば、隼はベッドから起き上がって「おかえりなさい」と笑いかけてきた。
後ろからのぞき込んできた泰夫が訝しげな視線を送ってくるが、それには違う違うと小さく首を振って否定する。
勘違いも甚だしい。

「おまえさっき帰っただろ。なんでまたいるんだよ」
「おや、9時集合でしょう?ちょっとくらい早めに来てもいいじゃないですか」
「まだ一時間以上あるんだけどな」

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