Posted by なぎさ - 2010.05.31,Mon
少し深く息を吸い込めばつんと鼻をさす畳の匂い。
檜の匂い。
頬に感じるのは、僅かに開いた障子の隙間から入り込む、 少しひやりとする早朝の風。
何も置いていない、邪魔な物は一切排除された空間。
そこに在るのはただそこに居る人間のみ。
ぴりりとした空気はそこにいる人間を品定めするかのようにそこに ある。
嫌いではない。
しかし、 今に限ってはそれらは体中に感じるぴりぴりとした緊張を余計に助 長させるだけであった。
目を開けなくても感じる。視線を…
そして、実際に瞼を持ち上げてみれば、 やはり瞬きもせずにこちらを見ている鋭い双眸と目があった。
「いきなりの事であることは重々承知している。しかし、今日… 今晩に急遽決まった。心してかかるように」
正座したまま無言で頭を下げる。
こちらへの配慮なんて微塵も感じられない威圧的な言葉。
逆らうことなど、許されていない。
堪えろ、飲み込め、このもやもやをしまい込め。
感情を無にしろ、全てを受け入れろ。
自分に言い聞かせていないと頭がおかしくなってしまう。
だから何度も心の中で呟く。繰り返す。
そう、運命を自分で選ぶことなんて、許されていないのだから…
***
「…起きてください」
靄のかかった頭に響く、低くて深い声。
しかし頭が働いていないせいか、 声はただの音声として右から左の耳へと抜けていくようだった。 意味のあるのものとして認識できない。
「…起きないと、悪戯しちゃいますよ」
「!?」
頭ではなく身体が先に反応した。
反射的に飛び起きた先で視界の半分以上を占めてきたのは…
「はっ、はやっ!?…ちょ!近っ!!」
「近いのは僕のせいではないですよね」
一気に目が覚めた。
もちろん頭もバリバリに覚醒した。
目の前で呆れたような視線を送ってくるのはもちろん隼であること は瞬時に把握できている。
そしてその彼はと言えば、 優雅に足を組んでジョットのベッドにちゃっかり座っていた。
「…もうどうやって入ってきたとか聞かないけど」
ジョットはため息を一つつくとベッドから降りた。
今日は騒がないんですね、 と若干残念そうに呟く隼は無視して時計に目をやる。
午前6時45分。
まぁ、若干早いものの二度寝するほどの時間ではない。
… と思ったがそういえば今日は校舎工事のため一日休校だった気がす る。バリバリ二度寝できる。
しかし隼が陣取っているベッドに再び戻るのも気が進まないので、 そのまま椅子の背に掛けてあった上着だけ羽織って椅子に腰掛けた 。
「…で、俺に何か用だった?」
何気なく視線を戻せば、 こちらをジッと見つめている隼と目があった。
「…君に話せない重大なことが…」
「話せないなら俺はどうやってそれを知るんだ」
まぁそうなんですけどねー、と隼が至極軽い調子で足を組み直す。
わざわざ言いに来たということはよっぽど重大なことなのだろうが 、教えてもらえないことにはどうしようもない。
いったい隼は自分にどうしてほしいのか。
「慰めて欲しいんです」
「は?」
檜の匂い。
頬に感じるのは、僅かに開いた障子の隙間から入り込む、
何も置いていない、邪魔な物は一切排除された空間。
そこに在るのはただそこに居る人間のみ。
ぴりりとした空気はそこにいる人間を品定めするかのようにそこに
嫌いではない。
しかし、
目を開けなくても感じる。視線を…
そして、実際に瞼を持ち上げてみれば、
「いきなりの事であることは重々承知している。しかし、今日…
正座したまま無言で頭を下げる。
こちらへの配慮なんて微塵も感じられない威圧的な言葉。
逆らうことなど、許されていない。
堪えろ、飲み込め、このもやもやをしまい込め。
感情を無にしろ、全てを受け入れろ。
自分に言い聞かせていないと頭がおかしくなってしまう。
だから何度も心の中で呟く。繰り返す。
そう、運命を自分で選ぶことなんて、許されていないのだから…
***
「…起きてください」
靄のかかった頭に響く、低くて深い声。
しかし頭が働いていないせいか、
「…起きないと、悪戯しちゃいますよ」
「!?」
頭ではなく身体が先に反応した。
反射的に飛び起きた先で視界の半分以上を占めてきたのは…
「はっ、はやっ!?…ちょ!近っ!!」
「近いのは僕のせいではないですよね」
一気に目が覚めた。
もちろん頭もバリバリに覚醒した。
目の前で呆れたような視線を送ってくるのはもちろん隼であること
そしてその彼はと言えば、
「…もうどうやって入ってきたとか聞かないけど」
ジョットはため息を一つつくとベッドから降りた。
今日は騒がないんですね、
午前6時45分。
まぁ、若干早いものの二度寝するほどの時間ではない。
…
しかし隼が陣取っているベッドに再び戻るのも気が進まないので、
「…で、俺に何か用だった?」
何気なく視線を戻せば、
「…君に話せない重大なことが…」
「話せないなら俺はどうやってそれを知るんだ」
まぁそうなんですけどねー、と隼が至極軽い調子で足を組み直す。
わざわざ言いに来たということはよっぽど重大なことなのだろうが
いったい隼は自分にどうしてほしいのか。
「慰めて欲しいんです」
「は?」
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