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Posted by なぎさ - 2009.05.08,Fri
わ、わはーい!!
学校からこんにちわです!(待て)

えとですね!えとですね!
マイゴッド、カナデさんからムクツナ小説をいただいてしまったのですよ!!
嬉しすぎたのでとりあえずブログにアップさせてもらいます!了承ありがとうございました!

えと!なんとまぁ、例のコピ本のお礼ということで…!(ガクブル)
むしろなぎさのほうがありがとうですよ!!
い、いいのかなぁこんな素敵文をいただいてしまって…///

先生な綱吉と生徒な骸さんですよ!必見です…!



落花流水


 気付かないうちに忍び寄る、
影のようなこの想いを僕は知らずにいた。

 沢田綱吉という教師は人気があった。

大学を出たばかりで同僚たちよりかは生徒の方に年齢は近い、というのも理由のひとつであるはずだ。しかし。この男にはいかんともしがたい魅力があるようだった。

 そう、たとえば他の授業は「タルいから」のひとことで明るい日差しの下へと逃亡する彼。なぜだか沢田の日本史の授業だけは熱心に耳を傾けている。

 ほら、本来ならば内職ぐらいやっていても不思議じゃない、入試のことしか頭にない彼女。時折こわばった表情がやわらぎ、実に穏やかなまなざしを教壇の上に向けさえする。

 はじめそれは僕にとって解けないパズルのように、もどかしく心をざわつかせるにすぎなかった。

 落つる花とそれを水面に載せて去りゆく流れのような関係性を、僕は未だに信じてはいないのだけれど、望んでしまっているのは確かだった。

 「さーわだせんせ?質問があるんですけど」

 話しかける女生徒の声に雑じる甘えた響きに、苛立ちをおぼえた。沢田綱吉と彼女が会話している位置、教卓の前と僕の席とは机二つ分ほどの距離が存在していたのだけれど、聞こうと意図するより先に耳が拾い上げていた。ざわつく教室の中で、沢田の声だけがはっきりと聞き取れる。

 「ああ、そこはね…『どうして』を考えると覚えやすいと思う。何故その政策を取らねばならなかったのか、その時代背景、そうだ家系図を見てもいいかもしれないね。人物の性格を知ることで見えてくるものもあるはずだから」

 言葉にも熱というものがあるのなら、彼の発するものはあたたかい。煌々と輝くろうそくの炎のようだと僕は思っている。口に出してそう言えば、頬を赤らめて照れ笑いをする彼を見られることだろう。もちろんそんなことはしないのだが。

 きんきんと響く嬌声は無遠慮に瞼の上から眼球をえぐろうとする。刺すような痛みで思わず顔をしかめた。さっさと消え失せろ。もしそれほどまでに愛に飢えているのならば、どこか、願わくはこの教室の外で疑似恋愛に陥ればいい。俯くと滑り落ちる前髪で、表情を読まれないようにしてから僕は呪詛を吐いた。

 「六道クン?」

 「だいじょうぶ?体調悪いの?」

 「あたしが保健室まで付き添おうか」

 ぐるりと僕の机を取り囲む。逃がすまい、と数で勝負をかける肉食獣と捕食されんとする哀れな獲物。弱みに付け込んで取り入ろうとする様は死肉に群がるハイエナよりあざとく醜悪に映る。

 「…いえ。少々寝不足なだけです。ですから、ね?」

 細く見開かれた眼は人好きのする笑みの大事なピース。唇がめくれ上がらないように注意して、できるかぎり優しく吊り上げる。彼女たちが求めるものをくれてやれば大人しく席へと帰っていくのだと、僕は長年の経験からわかっていた。

 冷めた表情は誰にも見られてはならない。

 何者も心の内側まで踏み込ませはしない。

 勝手に決めた最低限のルールを守ってさえいれば、問題は起こらない。何よりも汚れきった自己を見せなくて済むのならそれに越したことはなかった。

 視線を感じて振り返ると、教科書の隅とやや大判の日本史資料集の隅を合わせる沢田が目に入った。すでに質問をしていた少女の姿はない。これから始まる昼休みは、勉学に励む生徒を装うのではなく友人たちと弁当をつつく方を選んだようだ。

 成人にしてはあどけない、その顔。一際目立つ大きな瞳によるところが大きいのだろう、中学生でも通る童顔のおかげで彼は人畜無害を絵に描いたような男だった。穏やかなまなざしと、はにかんだような微笑に生徒たちは惹きつけられ、心を許す。

 しかし今、その評判の眼にどこか不穏な光を宿している。

 「六道骸、資料室までこの地図やら写真やら運べ」

 気安く、自然に。親しい生徒に手伝いを要請する声は教室中によく通る教師のものだ。ランチタイムのざわつきとは異なる動揺が広がる。

 ――ろ、六道に手伝わせるなんて。怖いもの知らずというか…何されても知らねえぞ。

 ――ええ!六道クンが力仕事を?先生、あたしたちに言ってくれればやるのに。

 同じざわざわでも男女間で多少意味が違う。よくできたお耳のせいでどこの誰が言ったかまで聞き分けることができた。男子の方は特にしつけが必要なようだ、が。今はそれどころじゃない。

 椅子をゆっくり引いて、机の上のパンを入っていた紙袋に戻す。作り笑顔を貼り付けながら教卓の沢田綱吉が立っている場所まで進み出た。クラス中が僕の行動を見守っている。授業中注目を浴びて前に出る生徒というのは、王のご機嫌伺いをするために媚びへつらう臣下に似ているなと不意に思った。

 他の奴らと違って、僕は彼に下るつもりはない。では、家来はどちらで、王さまはどちらだろう。

 「僕、これから食事なのですが」

 やんわりと、気が進まないことを伝えようとする。

 「いいからいいから。もし教室にメシ取りに帰る時間がないようなら俺が何かおごってやる」

 だから、つべこべ言わずにやれ。

 先ほど感じた不穏な気配の正体に触れて、僕は権力におとなしく従うしかないと悟った。ここで反抗しても僕の評判に傷が付くだけだろう――いや、箔が付くかも。

 思考の波にのまれているうちにひょいひょいっと、資料が腕の中に収められた。増していく重みに気が付いた時にはもう遅かった。

 「いやあ、お疲れさま。はいこれココアだよ」

 差し出されたマグカップを思わず手にしてしまう。社会科資料室、続き部屋に教員たちが作業をするデスクが置かれていて、勧められるがまま僕はクッションの置かれた椅子のひとつに腰を下ろした。片づけを終わらせると昼休みはそれほど残っていなかったために、結局昼食はご馳走になることになった。

 するりと解かれた風呂敷から現れたのは黒塗りの重箱だった。教室からここまで運んできた資料類よりも重量感がある。予想通り、何気なく開かれた蓋の下にはぎっしりとおかずが詰まっていた。大きな海老・かまぼこ・だし巻き・煮物・鰆の焼きものなどなど、食材が贅沢というのもあるかもしれないが、むしろ作る手間がなにもかもを凌駕する。僕はおせち料理を思い出した。

 「この量をひとりで食べるつもりだったんですか。そもそも僕はお箸を持ってきていないのですが」

 もう一段に敷き詰められた飯の上には三色のそぼろがのっている。半分あきれながら僕は食事を前にし、ふぬけた顔の教師を見た。

 「ああ箸ね…俺が食べさせてやろうか」

 「なっ、馬鹿なことを!」

 「じょーだんに決まってるだろ」

 からかうことに成功したからか、ひどく痛快そうに笑いながら、はい、と包みの中からもう一膳取り出した。あらかじめふたつ用意していたらしい。どうもうまくあしらわれているような気がして落ち着かない。

 沢田綱吉は手を合わせてからだし巻きをつまみ上げて口元に運んだ。もぐもぐと咀嚼してから彼は言った。

 「お前、ひとが嫌いなのか?」

 「…何の話です?」

「骸はいつもクラスメイトを、特に女子を耳元でうるさく羽ばたく虫程度にしか思ってないような気がして」

 名前で呼ばれたことに、胸がざわつく。その親しみを込めた呼び方を彼は誰にでもするのだろうか。思えばそればかり考える自分がいた。

 気遣ってくれているという事実だけが僕を満たしてくれる。

 授業終了後に片付けの手伝いをさせるという名目で、自分のオフの時間を使ってまで、僕との対話を選んでくれたことが嬉しかった。会話の内容など頭に入らず、僕は彼の響きだけに耳を澄ましていた。

 「それの何がいけないんですか」

 出来る限り素っ気なく、冷めた様子で。僕はここでもまた演じている。クラスメイトには見せられないひねた中身を、苦悶する十代の素顔を信頼する教師の前でさらす子ども、という役回りを。

 ほしい言葉を待つために。

 「じゃあさ、せめて俺だけは嫌わないでいてよ」

 「ソレが教師の言うことですか」

 もう一声、そうしたらもう僕は望まない。心地よい流れに身を任せるように日常に埋没することができる気がするのだ。まだ温かいココアに口をつける。甘いカカオの香りと弁当はそぐわなかった。

「あはは確かに不適切な発言かもな。たださ俺はきっと、お前がひとりの世界で生きてるつもりになってるのが気に食わないんだよ」

 さらりと言い放った後、沢田綱吉は沈黙した。重箱と同じ色で塗られた箸をしきりに動かしている。まだ足りない。全身を走る衝動はまだ求めることをやめない。

 「あ…、怒るなよ?いやいやいや、そんな睨むなって」

 目つきが悪くなっていたのか、彼は慌てだした。何に対する怒りなのか、わからないのだろう。

 わかるはずもない、これは渇望なのだから。

 「綱吉先生こそ、中学生に言い寄られて鼻の下伸ばすなんて初心ですね」

 ちょっとした仕返しだ。新米教師がこの手の話題に疎いことを僕は知っている。一瞬にして差した朱を見て、勝ったと思った。主導権を握るのは僕でなくてはならない。それは誰と接している時でも同じこと。

 「おとなをからかうんじゃない」

 真っ赤になって言ってもおとなの威厳は保てませんよ、先生?

 窓の向こうにある景色、このまちを包囲する柵が見える。僕がここから出ることはおそらくないだろう。女を作って出て行った父さんと混同している母さんは、僕を離しはすまい。愛するひとから同じぶんだけの慈しみや情が返ってくるなんて幻想だ。

 それに代用品でまかなえるくらいなのだから底が浅い。

 「ねえあなた、わたしはあなたの綺麗な顔が好きだわ」

 そう言って頬を撫でる母さんの手はわずかに震えている。もう一方の手で僕がクラスメイトを痛めつけた拳をいたわる様に触れた。

 「あなたまた喧嘩したの、しょうがないわね」

 くすくすと花がほころぶような笑い声を上げて、バス停の前で別れた同級生に触れた唇をなぞる。

 「ずっと一緒よ」

 「六道骸、窓の向こうに何が見える?」

 流れに身をまかせていたのに、急に腕を掴まれた。しんと静まり返った教室で、新任の教師がこちらを見ている。生徒指導の教員に注意されたとかいう明るい色の髪は地毛なのだそうだ。女子がそう噂するのを聞いた。身長は教壇の上に立っているせいで高く見えるが、僕とあまり変わりはしないだろう。

 「空が。高く広がる蒼が」

 ふうと息を吐くと、将軍の名を持つ彼は後で社会科資料室に来るように告げた。

 「どうしたんだ、いきなり笑いだして」

 「いえ…そういえばあの時もこうしてこの場所に呼ばれたんでしたっけ」

 逃げることもできたが、生徒に好かれる理由に興味が湧いて説教覚悟でついて行ったら、まあ座れと勧められ、なし崩し的にお茶を飲む羽目になった。そこで好きなものは何かとか、部活はとか、家族は何人とかどうでもいいような僕の情報を徹底的に収集したのだ、この男は。それが本日のココアとか弁当に反映されていた。

 「そうそう、お前だんだんイラついてきてさあ。あからさまに機嫌悪くなってむすっとするんだもん」

 クラスの評判とは大違いだ、と綱吉は言って楽しそうに笑った。

 どうってことないという顔で、僕の隠す闇を許してくれる気がした。抱えた重荷は知らぬ間に軽くなる。だから愛されるのだろう。求められるのだろう。

 「僕、綱吉先生には敵わない気がします」

 彼は不思議そうに僕を見つめる。

 「特別扱い、してもらっているって自惚れてもいいんでしょうか」

 きいん、とひび割れた鐘の音がスピーカーから聞こえる。

 「僕はあなたが生徒を思う以上に、沢田綱吉という人間をとても好いているんですよ」

 予鈴に消されないように耳元で囁いたもう一言に動揺した綱吉の姿を見られただけで、しばらくは良しとすることにしよう。
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