Posted by なぎさ - 2009.08.22,Sat
手風呂で軽く描こうと思ったら思いの外頑張ってしまった…うぅ…
2時間近くもかけちゃうなんて…;;
えとえと!カナデさんにハートの国のアリスのパロ小説をいただいたのですよぅ!!!!
そんでまだ途中だから先取りしてブログにアップしちゃおう!っていう!
カナデさん!本当にありがとうございました~!!!
追記で小説です!
※かなりムクツナ絡み度高めです(なぎさ的視点)。苦手な方はご注意あれ。
In Wonderful Wonder World ~Introduction~
麗らかな午後の庭。そよと吹く風が優しく頬を撫でては去っていく。
近くを流れる川のせせらぎに耳を傾け、天高く弧を描いて飛ぶ鳥を眩しげに見上げる。
今日も、昨日やその前の日と変わらずのんびり過ごそう。そう心に誓って、俺は緑の芝の上に寝そべった。頬杖を付き、草の青くさいにおいを肺いっぱいに吸い込む。
母さんは、おやつに何を用意してくれるだろうか。揚げたてのドーナッツ、それとも色鮮やかなゼリーが散りばめられたお手製クッキー?キュウリとハムのサンドイッチにスコーンがあれば、アフタヌーンティー気分も夢ではない。
食べ物のことばかり考えているものだから、お腹がぐう、と情けない声を上げてしまった。こういう時ほど庭が広くて良かったと思うことはない。遠くで庭師のおじさんが剪定をしているのがぼんやりと見えるだけで、木々の下でごろごろしているのは俺以外に人影はない。
屋敷の使用人も今日は父さんの知り合いだかなんだかが大勢やって来るらしく、準備に追われてあちらこちらを飛び回っているので構ってくれる者もいない。俺は暇を持て余していた。
ちょっと待った、客が来るということは母さんも忙しいということになりはしないか。ただでさえ家を空けがちな父さんからの頼みだから、完璧なおもてなしをしようと頑張っているはずだ。あの夫婦はなんだかんだ仲が良い。
そんないかにも「働いている」人に向かって、のんきにおやつ頂戴、なんてとでもじゃないが言い出せない。脱力して、草原に顔を埋めた。
空腹だと意識したとたん、どっと疲れてしまった。何かを胃袋に収納するまで、この悲鳴は止まないだろう。その音は翼竜の断末魔にも似ている。当然見たことも聞いたこともないけれど。
「今、何時だろ…明らかに三時は過ぎていそうだけど」
腹時計を信じれば、三十分ぐらいだろうか。これ以上は耐えきれないと思って、うつぶせの状態から起き上がる。白いシャツについた芝がちくちく肌を刺してきて鬱陶しいことこの上ない。グレーの半ズボンも同じような状況だ。
「時間を知りたければどうぞ、僕の時計を御覧なさい」
眼の前にすっと文字盤が差し出される。規則的な機械の音が聞こえた。シンプルなデザインの懐中時計だが手入れは良いらしく、文字盤を縁取る銀は相当年数を経ているはずなのに真新しい輝きを保っている。細い秒針が目まぐるしく円を描いていた。
三時四十分。ほぼ予想通りの時間に、内心溜息を吐きながら俺は時計を差し出してくれた白い手袋をはめた手の持ち主を見る。
その瞬間息をのんだ。
見知らぬ少年がそこには居た。蒼みがかった黒髪は風を受けて靡く様は美しくて、思わず伸ばしかけた手を慌てて引っ込める。くすっと無邪気に笑う顔は、男の俺の眼から見ても魅力的に映った。女の子たちが列をなして、ぞろぞろとついて回る様子が目に浮かぶようだ。
凝視されていることに照れるでもなく、彼はそれに応える様に俺を見返す。自分とあまり年が変わらないように見えるのに、彼は堂々としていた。自分に自信がある者独特の輝きに満ち溢れている。
俺の不躾な、好奇と賛美の入り混じった視線が自分の瞳に向けられているのに気づいた少年は苦笑いをして言う。
「オッドアイですよ、珍しいですか」
「うん……あ、失礼だよね?ごめん」
謝られたのが意外だったのだろうか、紺碧と紅の希少価値の高そうな眼を大きく見開いた様は年相応の少年のもので、ほんの少しだけ安心できた。
「いえ。あなたになら、いくら見られても構いません。お望みであればこの眼を抉って差し上げてもいい」
「いやいやいや!いりませんからね?」
「綱吉くんは控え目なんですね、ますます僕好みだ」
そういう問題ではないだろう、と心の中で俺は突っ込みを入れた。美形の考えていることは分からない。しかし、少年の言葉の中には流してはいけない部分があった。
「あの、なんで俺の名前…?それに君は誰なの?あ、もしかして今日来るって言ってた父さんの知り合いとかだったりするのかな」
少年は曖昧に微笑む。穏やかに降り注いでいた陽光はいつの間にか分厚い雲に阻まれている。シャツの中にまで生ぬるい風が侵入してきて、遠慮なく肌を撫で上げた。
「クハつ…失礼。どれからお答えしましょうか?」
「え、あ、その…じゃあ君の名前は?」
「僕は、六道骸。<白ウサギ>とも呼ばれています」
しろうさぎ?あだ名だろうか。ちゃらっと銀の鎖がこすれ合う音がする。骸と名乗った少年は再び時計を取り出した。
「おやおや。もう、時間がありませんね。もう少しゆっくり君と語らっていたいのですが、続きは道中お話することにしましょう」
骸は手を差し延べた。
染みひとつない白い手袋をはめた手が、俺の手が重ねられるのを待っている。
どこへ連れて行こうというのか。だって此処は俺の家の庭で、屋敷の中に客人を案内するのはむしろ俺の役割であるはずなのに。
その動作はとても自然なもののように感じられた。
俺は躊躇っていた。一度その手を取ってしまえば後戻りができないような気がしていた。
「お手をどうぞ、綱吉くん。愛しい僕の<アリス>」
<アリス>?彼は何を言っているのだろう。ぼんやりと、骸の端正な顔立ちを鑑賞する。
筋の通った鼻梁、神秘的な瞳の色、薄く微笑んだ唇。低音の声はどこか艶めかしい響きがあっていっそう彼の魅力に花を添えているようだった。
骸は自分に時間を教えてくれた親切な人だ。
でも俺は彼のことを何も知らない。つい先ほど聞いた名前以外は、何故俺の名前を知っているのかも、これからどこへ向かおうとしているのかも、その意図さえ分からない。
何一つ、俺は彼を信頼してもいいという証拠は持ち合わせていないのだ。
ちらりと骸を見ると、わざとらしく嘆息する。
「僕のことが信じられないんですね、酷いです綱吉くん。僕はずっと君と一緒に居たのに」
「何言って…ってわぁ!」
近づいてきた骸はひょいと俺を担ぎあげた。地上がいつもより遠くに見える。あまりの高さに思わず彼の上着の襟を掴んだ。骸がお構いなしにさっさと歩いていくせいでゆらゆらと揺れて、今にも落ちそうで怖い。
「何すんだよ、お前っ」
「もう『お前』に格下げですか、僕は悲しいです」
「いいから、下ろせこの…」
とにかく罵詈雑言を浴びせてやろうとした瞬間、俺の眼は明らかに「此処にあってはならないモノ」をとらえた。麗らかな昼下がり、自宅の庭でまどろんでいた。これは当然のように繰り返される日常で、なんら異質なモノが入り込む余地はなかったはず。
では、眼前の黒くぽっかりと口を開いた穴は何なのか。
骸は歩くスピードを僅かに緩めて、見せつける様にして穴の縁ギリギリに立った。
怖い。底の見えないほど深く、すべてを飲み込んでしまうほど暗いこの虚ろな口はぱっくりと獲物を待ち構えているようでもある。
下方から風が吹いて来ているらしく、前髪が少しだけ揺れている。服を掴む力も強くなった。
「クフフ、怖いですか?本当に君は可愛いですね…でもこれからは、ちょっとだけこの体勢では危ないかもしれないので、服じゃなくて僕にしがみついていなさい」
さあ、と骸は真剣な声で首に手を回す様に促す。抵抗しようかとも思ったが、その声の調子に圧されて渋々従う。
「そうです。良くできました…では行きますよ」
骸の足が地面を強く蹴った。俺には彼がどうしてそんな事をするのか分からなかった。
だって、そんなことをしたら。
穴に、落ちてしまう。
「うわああああ~っぅぎゃあ~~!」
悲鳴が闇の中で響き渡った。
落下速度。それは落ちれば落ちるほどに勢いを増していくのか。いや、限界値を超えると一定になるという話を聞いたことがある。
かなりの時間、落下し続けている気もするが、死ぬ前の一瞬がとても長く感じるという胡散臭い現象が俺の身に起きているだけなのかもしれない。なんにせよ、この長い落下時間を体感するうちにいつしか恐怖も薄れ、あるのは諦めと、無謀にも俺を道連れにして穴に飛び込んだ少年への恨みだけだ。
「もう可愛い声で啼いてくれないんですか?つまらない。きゃあきゃあ叫びながら抱きついてくれる綱吉くんはとても素敵で、色っぽかったのに」
「っ~~この変態!まったく何でお前なんかと心中しなくちゃいけないんだよ」
ふざけたこともいつまでいっていられることか。永遠に落ちていられるわけじゃない。近いうちに俺と骸は地面に到達するだろう。そして頭が割れる。血が出て、死んでしまう。みるみるうちに青ざめていく俺の顔を覗き込んだ骸は、不思議そうに首を傾げる。
「何言っているんですか、大丈夫ですよ。そんなつまらないことじゃなくて、君は僕のことだけを考えていていれば良いんです」
駄目だ。こいつとは碌な会話ができやしない。俺はようやく頭のおかしい美形の恐ろしさを実感する。なまじ顔が良いだけに周囲から性格を矯正されることなく、ここまで年を重ねてきてしまったのだろう。考えてみれば気の毒な人かもしれない。
「…もしかして僕、哀れまれてませんか?」
「ところで何で俺のことをお前知ってたんだよ。初対面だろ、今日が」
俺は骸の不満げな問いかけには答えずに質問で返す。説明は後でとか言っていたくせに俺の最大の疑問の答えはまだもらっていない。
「いえ、君と僕はずっといっしょでした。綱吉くんは<アリス>ですから」
僕たちは<アリス>を必要としているんです。
そう言って骸は俺の腰に回した手に力を込めた。
「骸?」
「大好きです」
「うえっ、何言ってんのお前」
「愛してます」
「……骸って相当イタタな人だったんだな」
「え?僕は正直に気持ちを告白しているのにどうしてそうなるんですか。だから何なんです?その哀れんだような目は……おや、そろそろ終わりですね」
かっと白い光が閃く。
穴の底に着く、その衝撃を予想してきつく眼を閉じた。
が、何も起こらない。骨が砕ける音も聞こえなければ、焼けつくような痛みを感じることもない。恐る恐る、俺は瞼を持ち上げた。
まず見えるのは骸の黒いスーツの上着。俺が握った痕はしわになってしまっている。上質な素材だったのに気の毒なことをしてしまった、と罪悪感をおぼえる。
「俺、生きてる」
もうあの奇妙な浮遊感はない。俺を抱いている骸の足が硬い床の上にあるのを見て安堵の息をついた。
「ね。大丈夫だったでしょう」
そっと骸は俺を床の上に下ろした。久しぶりに自分の足で立ったような気がする。やっと俺は自分が何処にいるのかを知ろうとする余裕が出てきた。
上を見上げても高い天井があるばかりで、一体どこから落ちて来たのか見当もつかない。第一俺ん家の庭が、屋内に繋がっているなんてことを容認してよいものではない。
窓ガラスを隔てた向こう側には一面の青空が広がっていた。そろそろと近寄ると、今居る部屋が地上から随分離れた所にあるのが分かった。下を歩く人は小指の爪ぐらいの大きさにしか見えない。
そして明らかに俺の家の周辺の景色とは異なる町並みがそこにはあった。ぺたん、と冷たいタイルの上に座り込む。ここはどこなのだ。俺は、どうやって家に帰ればよいのだろう。
考えを読んだかのように、骸は言う。
「君は二度とあの場所には帰る必要はありません、綱吉くんはこの世界の住人になればいい」
そんなことはできない。だって、父さんは言っていた。今日の晩は特別なのだと。会わせたい人を家に招いているのだと。だから俺は早いところ家に帰らなくてはならない。
「なあ、帰してくれよ…俺は帰らなくちゃいけないんだ」
「無理です。僕には君を帰してあげる力はありませんから。ただ手段を授けることはできる」
すっと骸は綱吉の眼の前にガラスの香水瓶のようなものを差し出した。
「これを飲んで下さい」
「飲めば、俺は家に戻れるのか」
「可能性はあります。すべては君次第ですが」
澄んだ湖の様な蒼と血を思わせる紅がこちらを見ている。迷っていることが見透かされるのが怖くて俺は俯いて視線を避けた。
当然だ。そんな得体のしれない液体を進んで飲むような奴は相当の馬鹿か、世間知らずでしかない。ずきん、と胸のどこかが痛む。
――ねえ、私のことを信じて。
もちろん、俺は信じてたよ。キミのことを。
「まじで、毒とかではないんだよな」
「心外ですね。僕が信用なりませんか…そこまで言うなら仕方ありません」
骸は自分で小瓶の中の半透明の液体を口に含む。
「おい、ちょっと待て。なにするつもり…っふ」
抵抗する間もなく強引に口づけられていた。呼吸困難に陥りそうなくらいの深いキス。骸により唇はこじ開けられ、そこから甘いシロップのような液体が流れ込んできた。甘い、けれど苦しくてどこか苦い味。
「ああ…僕もちょっぴり飲んじゃったじゃないですか。毒薬だったら一緒に死にましょうね」
ほんの少し唇を離して骸は囁いた。これは嫌味に違いない。自分を信用しきれない俺への当てつけ。頭がぼんやりする。無意識のうちに、唇はさらなるキスをせがむように薄く開いていた。
楽しそうに骸は笑って再び俺にキスを仕掛けた。
「ふう。綱吉くんが帰りたいというなんて予想外でしたね」
骸は一人ごちた。あの柔らかい唇と、甘いキスの味を思い出すと自然と顔がにやける。息も荒い綱吉の額に優しくキスを落とすと、薬の影響で朦朧としているだろう愛しいひとに呼びかける。
「僕はハートの城で待っていますよ、君は訪ねてきてくれるでしょう」
ねえ<アリス>?
「ねえ君、此処で何をしているの」
一切の感情をそぎ落とした、冷たい声が降ってくる。なんだか身体がだるい。此処はどこだろう、俺は確か庭でだらだらしていたはずだ。緑の芝の上に寝転がっていると、お腹が空いて、銀の懐中時計を見て三時過ぎだと知った。
銀の時計?
「ああっ。俺、はあいつに」
穴に落とされて、妙な液体を飲まないと元の世界には帰れないと言われて。無理やりキスをされた。さんざんな一日だ。ぼやけていた視覚も聴覚も鋭敏になっていく。ぐったりと壁にもたれかかった俺を冷やかに見下ろしている人物の存在をようやく認識する。
漆黒の髪はさらさらと真っ直ぐに頬に流れ、ややツリ気味の眼は野生の獣のように鋭い。誰からの接触をも拒むように、纏う空気はぴりっと張り詰めたものだった。同じ美形でも骸とは趣の違う美しさを持った少年である。
「あなたは、だれですか」
「君、良い度胸してるね。僕の質問には答えないでおいて、自分は答えてもらおうだなんて」
「す、すみません。俺はなんかその…信じられないかもしれないですけど、ひどく深い穴に落ちてですね、気が付いたら此処に居たんです。骸っていう、あなたや俺ともたいして年が変わらない感じの奴に連れてこられて」
「へえ。<白ウサギ>が此処に連れてきた、ね。君はあいつの愛しい<アリス>ということか」
そう言えば骸が見当たらない。ついさっきまで傍にいたような気がするのだが、眼の前にいるこの少年以外周囲に人の姿はなかった。
彼は黒い上着の様なものを肩にかけており、その長い裾は床にずるずると引きずられている。それを俺はなんとなく眺めていた。
「その<アリス>とかいうのは良く分からないんですけど、とりあえず俺は家に帰らなくちゃいけないんです」
骸が居ない以上、他の誰か事情がわかりそうな人に縋る以外に道は残されていない。少年は眉を顰めた。
「薬、飲んだんだろう」
彼は床に転がっているガラス瓶を一瞥してから言う。
「はあ、あの瓶の中のシロップみたいなやつのことなら一応飲みましたけど」
「じゃあ後は好きにすれば。とりあえず邪魔だから此処から出て行ってよ」
数度会話をした相手に掛ける言葉とは思えない薄情さに、綱吉は凍りついた。自分の身に起きた不幸を聞いておいて「邪魔だから出て行け」なんて、言われるとは思っていなかったのである。
「ええっと…せめて、何処へ行けば良いのかとかでもいいんで教えてくれませんか」
見知らぬ土地、知らない人々。心細いし、当てもなく彷徨っていれば来るべき時が来たら帰れるとかいう仕組みでもないらしいので、これからの俺の行動が俺の運命を左右すると言っても過言ではない。
「だから好きな所に行けばいい。ただし此処は駄目だ、僕の場所だからね。今後許可なく立ち入った場合、噛み殺す」
「そんなあ…ん?ところで俺、あなたの名前を教えてもらってないんですが」
「自分だって名乗ってないだろう」
ごもっとも。物騒なことを言っている割に骸よりは常識がありそうだ。
「俺は沢田綱吉です」
少年は心底嫌そうに、こちらを睨んでくる。面倒だから「名乗るな」とでも言いたげだ。
「………雲雀恭弥。<時計屋>。分かったらさっさと出ていきなよ」
ちゃきっと、両手に持つタイプの棒状の武器―トンファーとでもいうのだったか―を構えて威嚇する雲雀から逃げる様にして、階段を駆け降りた。
長い段差を下り終えて、建物の外に出られた時、俺の心は開放感でいっぱいだった。午後の麗らかな陽気はこちらでもまだ続いているようだし、意外と日暮れまで時間はありそうだ。くるりと後ろを振り返ると、一本の高い塔がにょきっと建っている。ここを下りて来たのだ、誰の手も借りずにひとりで。登山を好む人の気持ちが少しだけ分かったような気がする。
さて、何処へ行こう。
確か骸は「ハートの城」に来い、と言っていた。手掛かりとなるモノはいくら狂った奴でも利用しない手はないし、誰ひとり知り合いがいない中では、少なくとも好意を持たれている者の所にいくのが吉だろう。掌の上で踊らされているようで癪ではあるのだが。
骸は自分を<白ウサギ>だと言い、俺のことを<アリス>と呼んだ。
雲雀というあの醒めた目をした少年は<時計屋>だと名乗った。
名前ではないが意味のある記号。なんとなくそんなふうに思えて、口の中で呟いてみる。
ふと誰かに呼ばれたような気がして、振り返った。
自分がついさっきまで居た高い塔がそこにはあるだけだ。家の庭と繋がっていた場所だからか、とても離れがたいような気持ちが芽生えているのを知って苦笑する。下りるのでも苦労した階段を上がるのは気が引けるし、雲雀に酷い目に遭わされるのは確実だろう。なにせ「噛み殺す」とまで言われている。
道は二つ。
このまま骸の言葉に従い、城を目指すか。幸運にもこの辺りは人の集まる広場になっているらしく、先ほどから目の前をぱらぱらと人が通り過ぎていく。近くに居住区があるだろうし、商店などもありそうだから、誰かに道を聞けばどうにかして行けないことないだろう。城なんて、たくさんあるものでもないだろうし。
もしくは、雲雀に頼み込んで塔に置いてもらうか。不興を買って死ぬことを覚悟の危険な賭けだが、再びあの庭に帰れるならきっとここがまたあちらと繋がる道になるはずだ。
なんだかどちらも気が進まないのだが、早いとこ選んで、約束の時間までに家に帰らなくてはならない。今日は俺にとっても大事な日なのだから。
Which Do You Choose?
A.城へ行こう。とにかく骸に会わなきゃ始まらない。
B. 塔に戻ろう。泣いて頼めば雲雀だって協力してくれるかも。
B. 塔に戻ろう。泣いて頼めば雲雀だって協力してくれるかも。
‥‥……━★
なぎさがA選んだので第2話はムクツナですよぅ!///
第2話はもういただいてるんですが、後日サイトのほうにまとめてアップします!
カナデさん、素敵すぎるハトアリパロを本当にありがとうございました~!!
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